オリエントは、1950年に、現在の東京都日野市に設立された多摩計器株式会社で腕時計の製造を開始。翌51年にオリエント時計株式会社へ社名変更し、“輝ける星”をイメージした腕時計「オリエントスター」をデビューさせた。
以来、本格的な機械式腕時計の生産を続け、クォーツウォッチ全盛の70~80年代においても、オリエントは機械式時計を実直に作り続けてきた。機械式ならではのメリットや魅力の大きさをオリエントはよく知っていたからだ。
1950年代から、海外への輸出にも積極的に取り組み始めた。
中国を皮切りに、イランをはじめとする中東、ブラジルなどの南米諸国など、新たな市場を開拓した。電池式のクォーツウォッチとは異なり、機械式時計は電池交換を必要とせず、故障しても技術があれば修理ができる。特に電池供給が十分ではない地域においては、むしろ機械式の方が利便性は高く、オリエントの機械式時計は大いに歓迎されることになった。
また、海外進出の中で、国際的な競争力を高める必要を早くから認識していたオリエントでは、故障の少ない安定した品質と個性あるデザインを軸に、価格以上の中身をもった時計づくりを進めていく。それが、現在のコストパフォーマンスの高い製品につながっていることは言うまでもない。
オリエントブランドは、今や世界70カ国以上で親しまれる存在となった。
現在は秋田県内に製造拠点を構え、最先端技術と熟練技術者による手作業とを最適なバランスで融合しながら、丁寧で真摯な取り組みを続けている。さらに2017年には、長年、協力関係にあったセイコーエプソンと統合することで、技術が進化しており、事業展開の充実が進んだ。
そんなオリエントのフラッグシップ的なムーブメントが、“46(ヨンロク)系”と呼ばれるものである。1971年、すなわち昭和46年に誕生したことが、その名の由来だ。初期モデルに搭載されていたCal.46940は、当時の一般的な紳士用ムーブメントが1万8000振動/時だったのに対し、2万1600振動/時と振動数を高めることで、精度と耐久性が向上。46系ムーブメントは、その後も基本構造を大きく変えることなく、パワーリザーブインジケーターやGMT機能の追加、そしてスケルトン化など、機能面においても審美性においても進化を見せていく。それはこのムーブメントの基本性能の高さを証明することになった。
2017年には、ムーンフェイズ機能を初搭載。パワーリザーブインジケーターやセミスケルトン仕様も組み合わせた、オリエントスター「メカニカルムーンフェイズ」の誕生へと至った。
そして、2020年秋。最新の46系ムーブメントとなる、Cal.F7M62が登場する。
ベースとなったのは、2018年に登場した46系F7-50ムーブメント。パワーリザーブが、従来の40時間から50時間に向上し、日差+15~-5秒の高精度も実現。普段使い時計として安心して着けられるスペックを備え、実用性はより一層、向上した。
向上した性能はもちろん、繊細で美しい装飾にも注目したい。ローター部分はストライプ装飾、受け部分ではペルラージュと、異なる仕様の仕上げを施し、さらにダイヤモンドカット加工によって、エッジに輝きがもたらされた。トランスパレントバック仕様ゆえに、その手のかかった仕上げを鑑賞する楽しみは以前より増している。