オリエント70年の物語 ~個性を磨き続ける時計界の異端児~ 70年のマイルストーン

オリエント70年のマイルストーン オリエント70年のマイルストーン

ユニークなデザインとメカニズムで、他社とは一線を画してきたオリエント。その70年の歴史を振り返ると、数々の意欲作を見ることができる。豆電球で文字盤を照らす「フラッシュ」や曜日を表示する「万年カレンダー」、触っただけで時間を表示する「タッチトロン」といった傑作モデルの数々は、他社にはない個性を追求したオリエントならではのモデルであった。
その豊かな歩みを、オリエントを象徴するマイルストーンモデルとともに見ていこう。

ニューオリエント

1950s

1950s

ニューオリエント

オリエント初の量産型腕時計。1950年7月13日に、東洋時計の旧日野工場を借りてスタートしたオリエントは、同年に早くも腕時計の生産を開始した。搭載するムーブメントは、吉田時計店の時代に設計された小ぶりなものだった。手巻き。生産終了。

初代オリエントスター

1951

1951

初代
オリエントスター

「輝ける星」をイメージして名付けられた初代オリエントスター。ブルースティール針など、細部にその思いが宿る。搭載するのは、ニューオリエントと同じ戦前型のムーブメント。翌1952年には、新しい設計のムーブメントに置き換わった。手巻き。10石または15石。生産終了。

オリエントスター ダイナミック

1957

1957

オリエントスター
ダイナミック

戦前型ムーブメントの改良版を使っていたオリエントは、1950年代半ばに2番車と4番車を重ねたセンターセコンドムーブメントのT型を発表した。それを搭載したのが、オリエントスター ダイナミック。主ゼンマイには切れにくいニヴァフレックスを採用した。手巻き。生産終了。

ロイヤルオリエント

1958

1958

ロイヤルオリエント

オリエントの高級ラインに当たるロイヤルオリエント。オリエント初の防水仕様を備えた実用機でもある。この系譜は、後にグランプリやファイネスに受け継がれることとなる。搭載するのは、高精度化のためにムーブメント径を拡大したN型である。手巻き。19石。生産終了。

初代ダイバー カレンダーオリエント

1964

1964

初代ダイバー
カレンダーオリエント

オリエント初となるダイバーズウォッチ。1950年代半ばにいち早く海外進出を果たしたオリエントは、海外のトレンドに敏感であった。また同年には、ワールドタイマー付きの防水時計も発表した。自動巻き(LCW型)。21石。SS(直径40mm)。生産終了。

オリエント グランプリ100

オリエント
グランプリ100

オリエントの名を轟かせた野心作。当時の“多石競争”をリードすべく、自動巻きの石数を「グランプリ64」の64石から100石に増やした。また、緩急針には高級なトリオスタットを、耐震装置にはインカブロックを採用した。自動巻き(Cal.991)。100石。生産終了。

オリエント フラッシュ オリエント フラッシュ

オリエント
フラッシュ

1958年発表の「ルミナス」の後継機。2時位置のボタンを押すと、豆電球が光って文字盤全体を明るく照らす。非常に野心的な腕時計であったが、非防水ケースだったため短期間で製造中止となった。後に復刻され、人気モデルとなった。手巻き(L型)。21石。生産終了。

初代ウィークリーオリエント キングダイバー

1965

1965

初代ウィークリー
オリエント
キングダイバー

スタイリッシュなデザインを持つ初代キングダイバー。コンプレッサー風のケースに、頑強なL型自動巻きムーブメントを合わせている。ただし、防水性能は普通の時計とほぼ同じだった。自動巻き(L型、後のCal.660)。25石。SS(直径43mm)。40m防水。生産終了。

オリエント 万年カレンダー

オリエント
万年カレンダー

月に1回の調整だけで、その日の曜日が分かるのが万年カレンダーである。ただし、1960年から81年までしか表示できない。これは、手巻きムーブメントを搭載した最初期型。後に自動巻き化され、大ヒット作となった。手巻き(Cal.316)。21石。生産終了。

オリエント ファイネス

1967

1967

オリエント
ファイネス

デイデイト付きの自動巻きとして、当時世界最薄を誇ったのがCal.3900系である。輪列をオフセットさせ、コンパクトなリバーサーを収めることで、3.9mmという薄さを実現した。それを搭載したのが本作である。自動巻き(Cal.3900)。35石。SS。生産終了。

オリエント ワールドダイバー

1969

1969

オリエント
ワールドダイバー

1964年に発表された「カレンダーオートオリエントスイマーワールドトリップ」の後継機。デイデイト表示に加えて、簡易的な24時間表示を備えている。搭載するムーブメントはCal.34-1系である。自動巻き(Cal.34-1系)。21石。SS(直径43mm)。生産終了。

オリエント オリエント

オリエント
キングダイバー1000

1000m防水を謳ったダイバーズウォッチ。当時の日本メーカーでは密封度の高いケースを作れなかったため、スイスのC.R.S製のケースを採用した。耐磁性能を高めるため、軟鉄製のインナーケースを持つ。自動巻き(Cal.49系)。27石。SS(直径43mm)。生産終了。

オリエント ジャガーフォーカス

1970

1970

オリエント
ジャガーフォーカス

時計にもカラー化の波が押し寄せると考えたオリエントの経営陣は、カラフルな文字盤の開発を急がせた。その結果、完成したのが、グラデーションによるツートンカラーのジャガーフォーカス文字盤であった。9面カットガラスで鮮やかな発色を強調する。自動巻き。生産終了。

46系ムーブメント

1971

1971

46系ムーブメント

L型自動巻きに代わる基幹ムーブメント。サイズが小さく、薄くなった結果、汎用性はより高まった。加えて、マジックレバーを採用することで、高い巻き上げ効率を得ている。エプソンによる統合後、仕上げや精度などが一層改善された。今なお第一線級のムーブメントである。

オリエント タッチトロン

1976

1976

オリエント
タッチトロン

シャープと共同開発したLEDモジュールを搭載したモデル。ケースに触るとLEDが点灯して時間を表示するという、世界初の機能を備えていた。ただし、誤操作が起きやすかったのか、後にボタンによる点灯表示のタッチトロンⅡがリリースされた。生産終了。

オリエント 万年カレンダー

オリエント
万年カレンダー

万年カレンダーの自動巻き版。当時普及していた金属製のカレンダープレートを半自動化させた万年カレンダーは、世界的な人気を得た。2009年に、ほぼ同じデザインで復刻されたモデルは、コレクターズアイテムとなっている。自動巻き(Cal.46系)。生産終了。

オリエント モンビジュ

1991

1991

オリエント
モンビジュ

今やオリエントの代名詞的存在となったスケルトンモデル。その先駆けが、1991年に発表されたモンビジュである。後にこのムーブメントは、オリエントスターにも転用された。高級品らしく、ステンレススティール製のケースに金メッキ仕様だった。手巻き(Cal.48320)。生産終了。

オリエント M-Force

1997

1997

オリエント
M-Force

極めて高い視認性と、強固なケースを持つスポーツウォッチ。2011年にはJIS規格に準拠した200mダイバーズウォッチに進化した。ケースやブレスレットには、オリエント初となる純チタンを採用している。自動巻き(Cal.46系)。20気圧防水。生産終了。

オリエント メカトレニクス

2004

2004

オリエント
メカトレニクス

女性用自動巻きの55系ムーブメントを3つ搭載したトリプルタイムゾーンウォッチ。「トレ」はイタリア語で「3」を意味する。ワールドタイムリングにより、世界各地の時間を瞬時に判別できる。自動巻き(Cal.55系)。SS(直径50.5mm)。世界限定999本。生産終了。

ロイヤルオリエント

ロイヤルオリエント

旧オリエント時計が作り上げた最高傑作。2003年に設立された時計工房OTC(オリエントテクニカルセンター)で組み立てられた。ムーブメントも新規設計。08年からはレギュラー化された。自動巻き(Cal.88700)。30石。SS(直径38mm)。限定100本。生産終了。

オリエントスター レトロフューチャー

2005

2005

オリエントスター
レトロフューチャー

2000年以降、オリエントは他のジャンルのデザイン要素を採り入れることを模索した。その帰結が、このレトロフューチャーである。これは車のデザインをモチーフにしたモデル。文字盤からムーブメントのテンプが見えるセミスケルトンを採用した。自動巻き(Cal.46系)。生産終了。

オリエントスター モダンスケルトン

2014

2014

オリエントスター
モダンスケルトン

新生オリエントを代表するモデル。ダイヤモンドカットのインデックスや針、サファイアクリスタル製の風防など、凝ったディテールを備えている。パワーリザーブは約40時間。自動巻き(Cal.40S62)。SS(直径41.0mm、厚さ12.0mm)。10気圧防水。生産終了。

オリエントスター スケルトン

2016

2016

オリエントスター
スケルトン

モンビジュ以来、培ってきた伝統を投じたスケルトンモデル。ムーブメント部品を適切に配置することで、スケルトンの抜け感が強調されている。手巻き(Cal.48E51)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径39mm)。5気圧防水。24万円。

オリエントスター メカニカルムーンフェイズ

2017

2017

オリエントスター
メカニカル
ムーンフェイズ

パワーリザーブ表示に、セミスケルトンとムーンフェイズ表示を併せ持ったモデル。機能と仕上げを考えれば、この価格は驚異的だ。自動巻き(Cal.F7X62)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径41.0mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。17万円。

オリエント時計* の前身である多摩計器の創業は1950年だが、その起源は01年にさかのぼる。時計職人の吉田庄五郎は、東京・上野に時計の輸入販売を行う吉田時計店を創業。13年からは時計用のケースを製造し、20年にはクロックを生産する東洋時計製作所を設立した。続く34年には、腕時計の製造に着手、36年には4階建ての日野工場を完成させた。戦時中、航空兵器の量産に従事せざるを得なかった東洋時計製作所は、戦後に再開したものの、経営の混乱により会社は解散となった。

日野工場の従業員たちが集まって、50年に操業を開始したのが多摩計器である。同社は51年4月に社名をオリエント時計に改称。腕時計や目覚まし時計、小型ベアリングの製造などに乗り出した。

オリエントの面白さは、創業後直ちに、顧問として青木保を招聘したことだった。東京大学の名誉教授であり、日本時計学会初代会長を務めた青木は、日本の時計産業を大きく変えた理論家であった。彼の指導の下、オリエントの時計は大きく信頼性を高めることとなる。

戦後の混乱から立ち直ったオリエントは、55年にセンターセコンドのT型ムーブメントを発表。58年には大径のN型を発表した。このムーブメントを搭載したのが、同年発表の「ロイヤルオリエント」である。近代的なムーブメントを手にしたオリエントは、台湾、アメリカ、カナダ、イラン、ブラジルなどに時計の輸出を開始した。今なお、オリエントのビジネスは国内よりも海外のほうが大きいが、その基礎は50年代に築かれたのである。

海外への進出は、必然的にオリエントの競争力を高めることとなった。61年には、スイスメーカーのペラトン自動巻きを思わせるラチェット式の自動巻き機構を搭載したN型自動巻きムーブメントを発表。スイス勢と戦える競争力を手にしたオリエントは以降、ユニークさに大きく舵を切る。価格を下げるのではなく、デザインと機構による差別化でシェアを伸ばそうと考えたのである。

その先駆けは、64年の「グランプリ100」と「フラッシュ」だ。前者はN型自動巻きの後継であるL型自動巻きの石数を100石まで増やした高級仕様であり、後者は内蔵した電池で文字盤を光らせる時計であった。アイデア自体は58年の「ルミナス」に同じだが、デザインに凝るオリエントらしく、文字盤外周にはダイヤモンド状のカットが施された。

65年の「ウィークリーオリエントキングダイバー」も、やはりデザインへの試みである。スイス製のダイバーズウォッチを思わせるスタイリッシュな意匠は、同時代の日本製ダイバーズウォッチとは一線を画していた。そして、デザインと機能を高度に両立させたのは、67年の「ファイネス」である。「オリエントグランプリ」の後継機として生まれた本作は、デイデイト付きとしては当時世界最薄のキャリバー3900を搭載していた。

60年代後半以降、オリエントは一層ユニークさへの傾倒を進めた。68年には、卵型ケースの「レーサーF3」を発表し、69年にはカラフルな「ワールドダイバー」を追加した。そして70年には、最もオリエントらしいと称される、グラデーションを強調した文字盤を採用した「ジャガーフォーカス」を発表した。カットした風防と合わせて、オリエント=カラーという印象を強めることとなった。

デザインが変わると、既存のL型自動巻きは大きく厚くなりすぎ、71年に自社製の46系自動巻きムーブメントを発表した。これは、今なお受け継がれるオリエントの基幹キャリバーである。以降、オリエントはクォーツ時計の製造に軸足を移すが、機械式でも「万年カレンダー」やスケルトンウォッチの「モンビジュ」といったユニークなモデルをリリースした。これらは、デザインと機能におけるユニークさを追求した、オリエントの集大成と言えるかもしれない。

この路線は、その後もオリエントの機械式時計に踏襲される。97年にリリースされた「M-Force」は、46系ムーブメントを載せたオリエントらしいカラフルなスポーティーウォッチであり、2004年の「メカトレニクス」は、女性用のムーブメントを3つ搭載した、オリエントしか作り得ない野心作だった。一方で、同年に発表された「ロイヤルオリエント」は、1958年の初作、そして67年のファイネスを思わせる極めて洗練された時計であり、オリエントデザインの豊かさを知らしめる傑作となった。

セイコーエプソンとの統合後も、オリエントはそのスタンスを貫いている。2014年以降のスケルトンモデルは、テンプを露出することで機械式時計の面白さを強調する一方、内外装の作りを改善することで、時計としての魅力を一層増した。価格を下げるのではなく、機能とデザインの面白さで世界に打って出たオリエント。その明快な個性は、形こそ変われども、今のモデルにも脈々と受け継がれている。

*2017年セイコーエプソンと業務統合。

※クロノス日本版より転載

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